院長ブログ

夏ばての漢方

2016.08.09

いよいよ、夏本番の季節になってきました。夏ばて、脱水、熱中症などの状態で当院に受診される方も決して少なくありません。そこで良く聞かれるのが夏ばての漢方です。夏ばてとは医学的にはどのような状態なのでしょうか。

夏ばてとは脱水症状にともなった胃腸機能の低下であると私は考えて居ます。

脱水には高張性脱水と低張性脱水があり、前者は大量の汗をかき水分を失った時に起こる脱水(昔の運動部:水を飲むなですね)で、後者は汗をかいた時に大量の水を飲むことでおこるものです。まあ適度に水分を補いながら、ミネラルを補充すれば医学的には大丈夫なのですが、最近の人達が簡単に脱水症の症状に陥るのは、気のエネルギー不足が原因であると、私は考えて居ます。今日はそのことについてお話させてください。

脱水症の症状は嘔吐、頭痛、眩暈で、これらはすべて水の偏在、水分代謝の悪さが原因です。漢方ではそれを水毒といいます。水の偏在を正すのに必要な気のエネルギーは脾:消化管から得られます。要は食事で得られたエネルギーで水の偏在を治すという意味です。しかしろくな食事がとれず、三食冷たいそうめんで、水の偏在を正せるでしょうか?。逆に消化管を冷やし、余計に水の偏在を強めるでしょう。そのようなときにいいのが益気湯です。

益気湯には補中益気湯と清暑益気湯があります。詳しい話は置いておき、夏ばてになりにくくするのは補中益気湯で、夏ばてになったら清暑益気湯を私は使っています。特にフィールド内で多くの運動量と暑さと戦いながら結果を出さないといけないような競技を強いられている方々にはお勧めします。気温が20度の状態と30度の状態での集中力や理解力などの脳の働きを調べた研究報告を聞いたことがりますが、数倍の差がでるそうです。ましてその中で強いストレスとプレッシャーがかかった場合はどうでしょうか。ストレスとプレッシャーをどのように捉えるかは個々において差がありますが、消化管の状態は完璧にしておく必要がありますね。

私も幼少期からの大ファンの球団で連続出場記録がかかっていた選手が不調におちいったのも症状としては脱水によるものだったのかなと思っています。その根底にあるのは冷水で消化器を冷やした事による消化器能力の低下と推測しています。その後、内野守備、打率も上昇し、新聞では「自信をとりもどした」「輝きをとりもどした」書かれていましたが、私は「勇気をとりもどした」と思っています。いずれにせよ今後の活躍に期待しています。

さて、3000本安打を達成したイチローの食事内容が、毎朝カレーライスであるというのは有名な話ですが、イチロー選手なりに消化管をいい状態に保つ最高の食事内容なのではないでしょうか。胃腸を冷やさずに消化器能力を高め、エネルギー効率も良く、自分のリズムを崩さないというのがいい食事内容だと思います。

 

追伸:夏ばてにウナギを食べるのは止めましょう。ウナギが食べれるだけの消化器能力がある方が夏ばてするはずがありませんので、必要ありません。夏ばてになるくらい消化器能力が落ちた場合はうなぎのようなものは消化できませんので逆に体調が悪くなります。素直に消化にいい物を食べて、体調を戻してから、食べたければうなぎを食べてください。