漢方の処方を決める時、患者さんの体質の見極めは非常に重要な点となります。体質には「冷え性体質」「おけつ体質」「解毒証体質」「臟毒証体質」など様々にありますが、おのおのにおいての痛みには深く関係しており、漢方療法は当然のごとく違います。おのおのにおける痛みの処方構成は、その体質改善の度合いと、今後の治療の流れにおいて重要な役割を担っており、その時々で変化していきます。簡単に言えば、私は体質とは病気ではないと思っています。女性の冷え性は病気でしょうか?。男性の寒がりや暑がりははたして病気でしょうか?。夏でも股引が手放せない方々は異常なのでしょうか?。冬に半袖を着ている方々は変な人たちなのでしょうか?。ですので、それらの病態は「治す」のではなく「変える」必要があるのではないでしょうか。これはもしかしたら私だけの考え方かもしれませんが、私は患者さんにそのように説明しております。私が漢方と出会ったのは、他府県からいらしたある「PHN:帯状疱疹後神経痛」の方との出会いでした。2度にわたる癌の手術後に発症された方で、ひどいPHNに苦しまれていました。他院より麻薬を含めた大量の投薬をされており、もはや副作用なのか、元々の症状なのかも分からないような状態でした。「痛み」以外にも、「眠気」「だるさ」「便秘」「食欲不振」など様々な症状がおありでした。入院をしてもらい、まずは神経ブロック(当時、それしか私の治療法はありませんでしたので・・・・)に先立ち、まず私が行ったのは、投薬の整理でした。高血圧、糖尿病、前立腺肥大関連の薬のみ残して、他の鎮痛薬をすべて中止したところ、患者さんが言われた言葉は「先生、本当にありがとうございました」「体調が良くなったので、もう大丈夫だと思います」の一言でした。そうなのです。「痛み症状」だけにとらわれ、力で押さえようとしていたため、体に最後に残っていた力までも削いでいたのです。退院を急ぐ患者さんに、「漢方でも試してみませんか」とお話しし、以前に聞いたことのある「牛車腎気丸:107番」「補中益気湯:41番」を試してみたところ、家族も見違えるように元気になられ2週間で退院されました。漢方が良かったとかどうかなどはどうでもいいことなのですが、患者さんの健康状態を見ずに(病態すべて)、痛みしか見ないと言った風潮には疑問を感じています。逆に、「アトピーや喘息の治療にステロイドは使いません」と言った、明らかに西洋の医療の方が有効であるのに「漢方にこだわる」風潮もありもっとバランスよく使えばいいのにと常日頃思うものです。先の患者さんは「冷え性で2度の大病で新陳代謝が低下した寒がりの老人」のPHN症例でした。そのような方に継続的なNSAIDSは必要なのでしょうか。ステロイドは有効なのでしょうか?。急性期などの場合によっては当然、必要なのかもしれません。でも、私の診療においては、どのステージにおいてもその方の体質、痛みの病態にあわせた漢方薬をおすすめしております。もちろん神経ブロックにおいても同様です。次回は解毒証についてお話しさせていただきます。